映画『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリーを、実存科学の三つの構造──Meta(変えられない前提条件)、シャドウ(抑圧された影)、天命(Metaの必然的収束点)──で読み解く。
三つの名前を持った男。ファルーク・ブルサラを殺し、フレディ・マーキュリーを創造し、しかし鏡の中からザンジバルの少年は消えなかった。
すべてを剥がされた先に残った声だけで、七万二千人と交わった瞬間──天命が露呈した。
七万二千人の前で歌える男が、たった一人の前で本当の自分を見せることができない。
穴を隠さずに、穴ごと歌った──そのとき天命が露呈した。
Bohemian Rhapsody — Communion
フレディ・マーキュリーのMeta ── 自由意志なき世界の天命論
- Meta:パールシーの家系にザンジバルで生まれ、八歳で寄宿学校へ。四本の余分な前歯が声を産んだ
- シャドウ:「本当の自分(ファルーク)を見せたら全員が去る」──三つの名前で段階的に自己を改造した
- 天命:声で人と交わること。パフォーマンスが自己表現を超え、交感(communion)になった瞬間
選べなかった前歯が、選べなかった声を産んだ──すべてを剥がされた先に、穴ごと歌えたとき、天命が露呈した。
仮面を脱いだら誰もいなくなると信じている人へ。
フレディ・マーキュリーのMetaを読む →※ 本シリーズで扱う作品:ブライアン・シンガー監督『ボヘミアン・ラプソディ』(GKフィルムズ / 20世紀フォックス、2018年)。作品の著作権は原著者・制作会社に帰属します。