Fullmetal Alchemist

自由意志なき世界の天命論

鋼の錬金術師篇
箭内宏紀|実存科学研究所

荒川弘『鋼の錬金術師』の登場人物を、実存科学の三つの構造──Meta(変えられない前提条件)、シャドウ(抑圧された影)、天命(Metaの必然的収束点)──で読み解く。

等価交換の原則が支配する世界で、等価交換では手に入らないものに到達した者たちの構造を、ここに記す。

失った腕で抱きしめ、失った脚で立ち上がる。
等価交換の世界で、等価では手に入らないものだけが──天命だった。


Fullmetal Alchemist — Mortal Tenmei

ヴァン・ホーエンハイムのMeta ── 自由意志なき世界の天命論

  • Meta:クセルクセス王国の奴隷23号。名前も権利もなかった。フラスコの中の小人の企みにより53万人の魂を取り込み不老不死の身体を得た
  • シャドウ:「俺は人間ではない」── 53万人の魂を内包する不老不死の身体を「化物」と呼ぶ自己認識。その裏に「人間でありたい」という渇望がある
  • 天命:矛盾を抱えたまま笑って死ぬこと──覚悟を決めたはずなのに「やっぱり死にたくない」と漏らす。その矛盾の受容こそが「人間として死ぬ」ことの本質
2,000年を生きた男が最後に到達したのは、悟りではなかった。矛盾を抱えたままの受容だった──「充分だった」と言い切った直後に「でもやっぱり死にたくない」と漏らす。

「正しかった」と信じている選択の下に何が隠れているか、知りたい人へ。

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Fullmetal Alchemist — Equivalent Exchange

エドワード・エルリックのMeta ── 自由意志なき世界の天命論

  • Meta:父ホーエンハイムの血統が規定した錬金術の異常な才能。9歳で母を喪失、父は出奔。11歳で人体錬成の禁忌を犯し、左脚と右腕を喪失。弟アルフォンスは全身を失う
  • シャドウ:「助けてほしい」──一人で解決しなければならないという信念の奥に、ただ泣いて誰かに抱きしめてほしかった11歳の子供が凍結されている
  • 天命:真理の扉──錬金術師としてのアイデンティティそのもの──を手放したとき、「何も持たない、ただの人間として、それでも歩く」という天命が立ち上がった
等価交換では手に入らないものがある──力を全部手放すことで天命に到達した少年の構造が、「手放す」ことの意味を最も鮮烈に照らす。

「一人で全部やらなきゃ」と走り続けている人へ。

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Fullmetal Alchemist — The Hollow Armor

アルフォンス・エルリックのMeta ── 自由意志なき世界の天命論

  • Meta:ホーエンハイムの次男。「弟」という出生順位が全行動パターンの初期条件。10歳で人体錬成の代価として全身を喪失。鎧に魂を定着された状態で四年以上を過ごす
  • シャドウ:「自分のために生きてはいけない」──兄が右腕を犠牲にした以上、自分を優先することは兄への裏切りになるという非合理的信念
  • 天命:身体を取り戻し、父の手を握り「あったかい」と感じた瞬間──「受け取ること」で天命に到達した。兄と反対方向に旅立つ
空洞の鎧の中で五年間、優しさだけを握りしめて生きてこられたのは──「受け取ること」を自分に許可できた弟の構造が、あなたの中の壁を溶かす。

「誰かのために」を理由に、自分を後回しにし続けている人へ。

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箭内宏紀(やないひろき)
実存科学研究所 代表。「天命の言語化セッション™」を提供。「Metaがある限り自由意志は存在しない」(M ⇒ ¬F)を第一公理とする実存科学を提唱。著書に『Metaがある限り──自由意志・自分・他人は存在しない』『自由意志なき世界の歩き方』ほか。
公式サイトはこちら

*  本シリーズで扱う作品:荒川弘『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス、2001-2010年、全27巻)。作品の著作権は原著者・制作会社に帰属します。

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