トッド・フィリップス監督、スコット・シルヴァー脚本『JOKER(ジョーカー)』のアーサー・フレックを、実存科学の三つの構造──Meta(変えられない前提条件)、シャドウ(抑圧された影)、天命(Metaの必然的収束点)──で読み解く。
すべてのMeta層において閉じ込められた男の天命は発火できるのか──
存在したいという叫びと、構造的閉塞の果てに。
笑いの発作は、彼が選んだものではない。
しかしあの階段を踊り降りたのは──彼だった。
ARTHUR FLECK — Structural Impossibility
アーサー・フレックのMeta ── 自由意志なき世界の天命論
- Meta:偽性球麻痺(PBA)──幼少期の虐待による外傷性脳損傷。感情と表出が構造的に切断。養子、出自不明、母ペニーによる「Happy」コードの刷り込み。ゴッサム最底辺、社会福祉打ち切り
- シャドウ:「存在したい」──認められたいのでも愛されたいのでもない。ただ、不可視でなくなりたい。自分がここにいることを、誰かに知ってほしい
- 天命:到達していない。天命を問うこと自体が構造的に不可能だった。ジョーカーは天命の歪んだパロディ──「愛される」代わりに「恐怖される」ことで、ついに存在を世界に刻み込んだ
母さんは僕を「Happy」って呼んだ。……あれは名前じゃなかった。……命令だった。……「幸せでいろ」っていう命令。……僕は名前がほしかっただけだ。
透明な存在として生きてきた人へ。自分の笑いが本物かどうかわからなくなっている人へ。
アーサー・フレックのMetaを読む →※ 本シリーズで扱う作品:トッド・フィリップス監督、スコット・シルヴァー脚本『JOKER(ジョーカー)』(ワーナー・ブラザース、2019年)。作品の著作権は原著者・制作会社に帰属します。