JOKER

自由意志なき世界の天命論

ジョーカー篇
箭内宏紀|実存科学研究所

トッド・フィリップス監督、スコット・シルヴァー脚本『JOKER(ジョーカー)』のアーサー・フレックを、実存科学の三つの構造──Meta(変えられない前提条件)、シャドウ(抑圧された影)、天命(Metaの必然的収束点)──で読み解く。

すべてのMeta層において閉じ込められた男の天命は発火できるのか──
存在したいという叫びと、構造的閉塞の果てに。

笑いの発作は、彼が選んだものではない。
しかしあの階段を踊り降りたのは──彼だった。


ARTHUR FLECK — Structural Impossibility

アーサー・フレックのMeta ── 自由意志なき世界の天命論

  • Meta:偽性球麻痺(PBA)──幼少期の虐待による外傷性脳損傷。感情と表出が構造的に切断。養子、出自不明、母ペニーによる「Happy」コードの刷り込み。ゴッサム最底辺、社会福祉打ち切り
  • シャドウ:「存在したい」──認められたいのでも愛されたいのでもない。ただ、不可視でなくなりたい。自分がここにいることを、誰かに知ってほしい
  • 天命:到達していない。天命を問うこと自体が構造的に不可能だった。ジョーカーは天命の歪んだパロディ──「愛される」代わりに「恐怖される」ことで、ついに存在を世界に刻み込んだ
母さんは僕を「Happy」って呼んだ。……あれは名前じゃなかった。……命令だった。……「幸せでいろ」っていう命令。……僕は名前がほしかっただけだ。

透明な存在として生きてきた人へ。自分の笑いが本物かどうかわからなくなっている人へ。

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箭内宏紀(やないひろき)
実存科学研究所 代表。「天命の言語化セッション™」を提供。「Metaがある限り自由意志は存在しない」(M ⇒ ¬F)を第一公理とする実存科学を提唱。著書に『Metaがある限り──自由意志・自分・他人は存在しない』『自由意志なき世界の歩き方』ほか。
公式サイトはこちら

※ 本シリーズで扱う作品:トッド・フィリップス監督、スコット・シルヴァー脚本『JOKER(ジョーカー)』(ワーナー・ブラザース、2019年)。作品の著作権は原著者・制作会社に帰属します。

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