宮崎駿監督・脚本『紅の豚』のポルコ・ロッソを、実存科学の三つの構造──Meta(変えられない前提条件)、シャドウ(抑圧された影)、天命(Metaの必然的収束点)──で読み解く。
仲間を失い、死にすら拒絶された男が自らに豚の顔という四重の鎧をかけた──
天命は未解決のまま、赤い飛行艇は昼間の庭にある。
豚の顔は脱げないかもしれない。しかし赤い飛行艇は、昼間の庭にある。
PORCO ROSSO — Unresolved Destiny
ポルコ・ロッソのMeta ── 自由意志なき世界の天命論
- Meta:アドリア海のエース・パイロット。戦争で仲間を次々に失い、死の光の列にすら加われなかった。ファシスト政権を拒否し、自らに「魔法」をかけて豚になった
- シャドウ:自罰的シャドウ──「人間の顔を持つ資格がない」。豚の顔が四つの機能を同時に果たしている──贖罪、鎧、アイデンティティ、義務からの解放。四重構造が互いを支え合い、一つを外すと全部が壊れる
- 天命:「未解決(UNRESOLVED)」──本シリーズ唯一、天命が開かれたまま残されるキャラクター。四重の鎧を脱ぐプロセスは始まっているが、完了していない。しかし赤い飛行艇は昼間の庭にある
被告も検察も裁判官も、全部俺だ。──死んだ仲間たちは何も言っていない。法廷も判決も刑の執行も、すべてポルコが一人でやっていた。
昼間に行けない庭を持つ人へ。脱げない鎧を着ている人へ。
ポルコ・ロッソのMetaを読む →※ 本シリーズで扱う作品:宮崎駿監督・脚本『紅の豚(Porco Rosso)』(スタジオジブリ/東宝、1992年)。作品の著作権は原著者・制作会社に帰属します。